向こう隣のラブキッズ


第2話 真夏のグミとおまんじゅう


それは週末の夜だった。その日は朝から平穏で、キッズ二人はそれぞれの窓辺でおしゃべりを楽しんでいた。

「ねえ、姫乃お兄ちゃん、今度の小説はどんなお話なの?」
しおりが訊いた。
「今書いてるのは童話でね。森の奥に小さな国があって、とてもきれいなお姫様が住んでいるんだけど、悪い魔女の呪いのせいで醜い鳥の姿に変えられてしまうんだ。隣国の王子様が何とか呪いを解こうとするんだけど、彼もまた魔法で木にされてしまうんだよ。でも、鳥はその枝にとまって美しい声で歌うんだ。でも、鳥は撃たれて死んでしまう。悲しんだ王子様の木が花びらを落とすと亡骸に当たって魔法が解けるんだ。それで、お姫様は一輪の薔薇に変わって、木の傍で花を咲かせるんだけど、魔法使いが妬んでその木を切り倒してしまうんだ。そして、花も悲しんで枯れてしまう。そして、枯れた花びらは風に乗って遠く隣国まで飛ばされて行く……というお話なんだ」
「何てきれいでかわいそうなお話なの。お兄ちゃんってほんとにすごいんだね」
しおりはうるうると涙をにじませた。

「ほんとに? いい話だと思う? ああ、よかった……。しおりちゃんに気に入ってもらえて……。クラスのみんなはこんなのつまらないって言うんだ」
「つまらない? みんなどうかしてるのよ。こんな傑作のお話の良さがわからないなんて……。でも、他の人なんてどうだっていいわ。お兄ちゃんの才能はわたしが一番わかってるから……。もし、お兄ちゃんのお話をバカにする奴がいたら遠慮しないでわたしに言ってね。そんな奴ら、みんなぶっとばしてやるからね!」
しおりはきっぱりと言った。
「ありがとう、しおりちゃん。僕、がんばるからね。そして、必ず、成功して連中を見返してやるんだ」
「そうだよ! がんばって! おにいちゃん」
二人は窓越しに固く手をつないで握手した。


一方、向かいの部屋では歩がさくらと話をしていた。
「そいでさ、体育の時間に厚井先生がゴリラの真似したんだけど、それが本物よりすごくてさ、みんな大爆笑だったんだ」
「へえ。随分ユニークな先生なのね」
さくらが言った。
「そうなんだ。いつもクラスじゃ笑いが絶えないんだよ。さくらお姉ちゃんはどう? 大学って面白い?」
「うーん。面白い時もあればそうでないこともあるかな? でも、今日はサークルの罰ゲームで3年の男の先輩がお姫様の格好させられて学内一周して来るなんてのがあって笑えたよ」
「へえ。何か面白いところなんだね。大学って……」

歩は興味津々でさくらの話をもっと聞きたがったが、階下で父親の呼ぶ声がした。
「おーい、歩くーん。お父さん、もうお風呂に入っちゃうよぉ。早く降りておいで」
「あら、歩くん。まだお父さんと一緒に入ってるの?」
さくらが訊いた。
「ほんとはいやなんだけどさ、お父さんが寂しがるから仕方なく入ってやってるんだ」
「ふうん。でも、いいじゃない? 男同士裸の付き合いができるってうらやましいわ」
「そうかなあ」
「そうよ。ほら、早く行ってあげなさい。お父さんがゆでだこになっちゃうわよ」
さくらに言われ、歩は渋々階段を降りて行った。


それからおよそ20分。歩が冷蔵庫からコーラを持って上がって来た。入れ替わりにしおりが風呂に向かう。
「よっしゃ。これからは至福の時間だもんね」
夕方コンビニで買って来たマンガ本を広げ、コーラとグミを手元に置いた。歩はそのグミが大好きだった。特に今は季節限定品としてレアなパイン味のものが袋に1つか2つ入っている。それがまた最高の味なのだ。しかし、食べても食べてもなかなかパイン味には当たらなかった。
「ちぇっ。これって外れだったのかな?」
残り少なくなった袋を覗くと黄色いグミが1つ奥にあるのが見えた。
「何だ。今日のも1つだけか」
歩は手前にあったオレンジ味のグミを口に入れた。隣の窓を見ると、窓際の机でさくらがパソコンのキイを叩いている。
「大学生ってのも案外大変なんだな」
そして、手にしたマンガ雑誌のページをめくる。と、その時、風呂から出たしおりが上がって来て言った。

「ねえ、コーラ残ってない?」
「残念。すっかり空になっちゃった」
空のボトルを振って笑う。
「何よ。ちょっとくらい残しておいてくれたっていいじゃない」
「やだよ。これ、おれのこづかいで買ったんだからさ。しおりも飲みたければ自分のこづかいで買ってくればいいだろ?」
「やーよ。外はもう真っ暗なんだからね。か弱い乙女が悪い大人に襲われたらどうすんのよ」
「へん! しおりを襲うような物好きな奴なんかいねえよ」
「ちょっと! それどういう意味よ?」
「言葉通りの意味」
「言ったわね!」
しおりは空のペットボトルを振り上げた。
「おっと、危ねっ!」
持っていた雑誌を頭にかざす歩。

と、その瞬間。
「あれ? こっちはまだ残ってるじゃん。一つもーらいっと」
さっと袋に手を伸ばし、グミをつまむと口の中へ放り込んだ。
「あーっ! 今のパイン味の……!」
歩が叫ぶ。
「うん。おいしかったよ。パイン味」
しおりがさらりと言って笑う。
「ふざけんなよ! パイン味のってレアなんだぞ! 1個しか入ってなかったんだから……。返せよ」
そう言ってしおりにつかみ掛かる。
「そんなこと言ったってしょうがないでしょ? もうお腹の中だもん。出せったって無理。また買ってくりゃいいでしょ?」
「何だとっ! おれがどんだけ楽しみにしていたと思ってんだよ? これって季節限定だから、夏が過ぎたらなくなっちゃうんだぞ!」
「だったら、また来年の夏に買えばいいじゃない」
二人は激しい言い争いを続けた。

「しおりのバカ!」
「ふーんだ。あんたの方がもっとバカだよ」
「てめえ!」
歩が睨む。
「何よ? やる気?」
しおりも負けていない。握った拳に力が入る。互いの部屋を背に、不穏な風が渦巻いた。

(大体、歩なんてチビのくせに生意気よ。ここらで一つこらしめてやんないと……)
(ちくしょっ、しおりの奴。たった一つしかたがわねえのに姉貴ぶりやがって……)
二人はギンと睨んで間合いを取った。と、不意にしおりの背後で隣の家の声が聞こえた。
「姫乃? そろそろお風呂に入ってしまいなさい」
「はーい。あと少しだからちょっと待ってね、お母さん」
(そうか。ここで歩が本気出したりしたら、姫乃お兄ちゃんの部屋まで壊れちゃう)
しおりは歩の動きをけん制しつつ後ろを気にした。

その時、歩の背後で携帯が鳴った。さくらの部屋からだ。
(あのメロディーは鹿児島のお婆ちゃんからの奴だな)
歩はほっとした。彼はさくらの携帯の着メロを大体把握している。
「はい。さくらです。ああ、お婆ちゃん? うん、元気よ」
とさくらの声が聞こえる。
(やっぱりそうだ。でも……)
歩は目の前で鬼のような形相でこちらを見ているしおりを見て思う。
(しおりのパンチが炸裂したら、さくらお姉ちゃんの部屋までぶっ飛んじまう)
二人はうーっと睨み合ったまま一歩も動けない。
「返せ!」
歩がだんっ! と足で床を鳴らす。すると、しおりも負けじとどんっ! と壁を叩く。床がみしみしと鳴り、家がぶるぶると震えた。

その時、誰かが慌てて階段を駆け上がって来た。しおり達の父親だ。
「一体どうしたんだい? 今、物凄い音が響いたんだけど……。しおりちゃん怪我はない? 歩君は?」
彼は可愛い子供達の体を点検した。
「何でもないよ」
歩が言う。
「大丈夫だから……」
しおりも言った。
「でも……」
心配そうな父親に歩が言った。
「しおりがおれのグミを食べちゃったんだ」
訴える歩。
「だって、歩がケチなんだもん。コーラも一人で全部飲んじゃうし……。食べたのはたった一つなんだし、歩がオーバーなんだよ」
「何だと! あれはただのグミ1個じゃないんだぞ! すごく貴重で大事な1個だったんだ!」
歩がまたしおりにつかみ掛かろうとする。それを父が止めて言った。
「そうか。可哀想にね。なら、お父さんがとっておきのおまんじゅうをあげるよ。それで機嫌を直してよ、歩君」

「えーっ! おまんじゅうとグミじゃ全然ちがうよ」
文句を言う歩。そんな弟を見てしおりが言った。
「そんじゃそのおまんじゅうわたしがもらっちゃお!」
「えーっ! やだよ。お父さんはおれにくれるって言ったんだもん。ねえ、お父さん、しおりにやったりしないよね?」
「ああ、おまんじゅうは歩君にあげよう」
そう言う父親に今度はしおりが文句を言った。
「そんなっ! ずるいよ、お父さん、そんなら、わたしにもおまんじゅうちょうだい」
「ごめん。おまんじゅうは一つしかないんだ。今度しおりの分も買って来てやるから今日のところは我慢しなさい」
「えーっ! いやだよ、そんなの! わたしだっておまんじゅう食べたいもん」
ごねるしおりの前で、歩が早速もらったまんじゅうをちらつかせる。
「もうっ! 底意地の悪い奴ね。なら、半分コしようよ」
「へんだ! やなこった」
歩はもぐもぐと強引に口の中へ押し込んだ。
「あーっ! ひどいよ。全部食べちゃって……」
しおりが拗ねる。

「仕方ないだろ? 歩の方が小さいんだから……。ね? しおりはお姉ちゃんなんだから我慢しなさい。また、今度買って来てあげるから……ね?」
なだめる父親の手を振り切ってしおりは自分の部屋に飛び込むとバタンと思い切りドアを閉めた。
「お父さんなんか嫌い!」
「しおりちゃん……」
呆然とドアを見つめる父に歩が言った。
「まったく、大人げないんだよな。たかがまんじゅうくらいでさ」
「歩、おまえも少しはしおりちゃんの気持ちも考えてあげないといけないよ。いつでも自分の我がままが通る訳ではないんだからね」
父親はやさしく諭した。が、
「何だよ? お父さんがまんじゅう一つしか持ってなかったのが悪いんじゃないか! それに、しおりがおれのグミ食ったりしなきゃこんなことにはならなかったんだ! 悪いのはしおりなんだからな!」
そう言って歩も部屋に入るとドアを閉めた。
「困った子達だ……」
真ん中に取り残されて父親はため息をついた。が、すぐに気を取り直すと言った。
「そうだ。今度はケンカにならないようにおまんじゅうとグミをたくさん買ってくればいいんだ」
父親はにこにこと笑いながら階段を下りて行った。

もともと密集している住宅街でしかも声のでかさでは定評のあるキッズのケンカは、両隣にも筒抜けに聞こえていた。姫乃は小説を書きながら思った。
(しおりちゃん、可哀想。いくら何でもおまんじゅうとグミじゃ割が合わないのに……)

そして、祖母からの電話を切ったさくらも思う。
(あれじゃ歩君が可哀想。お菓子のレア物がどんなに貴重なものか、あのお父さんにはわかっていないんだわ)

その頃、丁度その家の前を通りかかっていた者達もいた。右から来た3人組。先週しおりにボコされていた連中だ。彼らにもしおりと歩の派手なケンカは聞こえていた。
「どこぞも一緒だなあ。親父にゃ、レアグミ様の偉大さがわかってねえんだよな」
とリーダーの岩田が言う。
「そうそう。レア度ってのが大事なのによ」
と髪を突っ立てた鴨井も言う。
「でも、そのレア度の高い1個を狙ったように横取りするなんてすげえなあ」
妹系好きを公言していた吉永が感心する。
「って、おめえ、どっちの味方なんだよ?」
「そうそう。弟の気持ちわかってんの? 弟ってのはな、単に弟ってだけで理不尽な扱いされんだぞ」
岩田と鴨井が言う。

「そんなこと言ったって仕方ねえだろう? パイン味は女の子に似合う……。やっぱ、パイン味は最高だぜ」
「何言ってんだよ。やっぱ、グミっつったらオレンジ味だろう。なあ、鴨井」
「冗談じゃねえ。1番うまいのはアップル味に決まってんじゃねえか」
「いいや、誰が何と言おうとパイン味だ」
「オレンジ!」
「アップル!」
「パイン!」
3人は互いを睨んだ。
「やるか?」
「おう!」
「これだけは譲れねえ!」
3人組は、グミを巡って道端で取っ組み合いが始まった。

そして、通りの反対側からは街のごろつき3人組の若者が同じく日比野家の前を通り掛かった。こちらも先週歩から痛い目に合わされた人達だ。
「ふん。まんじゅうか。たまにゃ甘い物もいいよな」
ボスの本村が言えば、
「ああ。特に満点屋のまんじゅうが最高だよな」
と宮下も言う。
「そうそう。おれ、茶まんじゅうが大好きなんだ。たまんないなあ、あのこってりとした重量感。まんじゅうっつったら、やっぱこしあんで決まりっすよね」
木根川の言葉に先の二人が異議を唱える。
「何? まんじゅうっつったら普通つぶあんだろ? あのつぶつぶ感がたまらねえんじゃねえか」
「何言ってんすか、二人共。こしあんもつぶあんも目じゃねえよ。おれはだんとつ味噌だよ、味噌! これぞ日本人の心」
宮下の意見にあとの二人が猛烈に反発した。
「何言ってんだ? おめえ」
「そんなのまんじゅうの世界から言ったら邪道だろ?」
「何? ふざけんなよ。何が邪道だ? 味噌まんはただ甘ったるいだけのあんことは訳が違うんだぞ」
と宮下も黙っていない。
「絶対こしあん!」
「つぶあん イズ ベスト!」
「味噌まんだってば!」
とこちらもまた通りを挟んでバチバチと火花が散った。

「何かうるさいなあ、外。これじゃあ、気が散って小説が書けないや」
姫乃が部屋で頭を抱える。
「ほんっと。うっさいわね。もうっ。グミって言葉を聞くだけでむかつくっつーか」
しおりがダンダンと階段を駆け下りて行く。そして、まだ家の前でグミのことでもめていた3人組を殴り飛ばした。
「ケンカならよそでやってよ! お兄ちゃんが小説書けないで困ってるでしょ?」
しおりが怒鳴る。その背後では風がビュンビュン吹き荒れている。歩道に転がっていた吉永が、そんなしおりを見てうっとりと言った。
「やっぱ、妹系って好き……」
「っつーか、それって妹と違うと思う」
「どっちかっつーとSM系……?」
岩田と鴨井がすっくと立ったしおりの顔を恨めしそうに見上げて呟く。
「二度とこの辺りで騒いでお兄ちゃんの邪魔をしたら承知しないからね!」
しおりはそう言い放つと家に戻った。

その頃、さくらも表の騒ぎで迷惑をこうむっていた。
「うんっ、もうっ! これじゃ、うるさくてレポートが書けやしない」
それを聞いた歩がすっくと立ち上がる。
「やいやい、てめえら、いい年こいてまんじゅうのあんこでもめてんじゃねえよ! さくら姉ちゃんが勉強できなくて困ってんじゃねえか。そんなにあんこが食いたけりゃ、てめえらがだんごにでもなってやがれ!」
歩がキックすると、ぐおーっと凄まじい風が吹いて、3人はだんごのように重なった。
「て、てめえはこないだの……」
「ガキのくせして……いつかぶっ飛ばしてやっからな……いつか……」
歩に1発でのされた本村と宮下が言う。と、下敷きにされている木根川がぼそりと言った。
「いや、いいっすよ。元気があるってのは……おれっち、こんなわんぱくな弟が欲しいっす……」
「げっ! おめえ頭でも打ったんか?」
「それって、相当ずれてるって……」
二人が言った。

「どうでもいいから早くあっちへ行ってよ! ちなみにおれはこしあんが好きだけどね」
歩の言葉に木根川がパッと瞳を輝かせて言った。
「そう! やっぱそうだろ? まんじゅうのあんこはこしあんだよな」
他の二人に同意を求める。
「やめてくれよ」
「信じらんねえ」
二人は呆れた。
「ねえ、君、おれの弟になんねえか? こしあん好きなんて気が合いそうだし……」
「わりいな。おれには兄ちゃんみてえな姉ちゃんがもういっからさ」
と背を向ける。

「ああ、ちょっと待ってよ、君……」
「裏切り者め」
と他の二人が同時に言った。
「奴が弟好きだったなんて……衝撃の新事実!」
とぼそぼそ言っていると、再びドアが開いて歩が言った。
「早く行かないともう一発ハイパーグレートキックをお見舞いするぞ!」
「ひ、ひぇーっ! わかった」
「キックは勘弁……」
「キッスならいいけど……」
と三人三様のことを言いながら道の向こうへ駆け去って行った。


そして、次の日。
「しおりちゃん」
姫乃が窓越しから声を掛けて来た。
「なあに? お兄ちゃん」
しおりがうれしそうに窓を開けると彼が満点屋の袋を差し出して言った。
「これ、しおりちゃんに……」
「わたしに? ありがとう。お兄ちゃん」
袋の中には、俗に葬式まんじゅうと呼ばれている大きなまんじゅうが一つ入っていた。
「でも……お兄ちゃん、これって……?」
「好きでしょう? おまんじゅう」
彼はにこにことうれしそうに笑っている。それを見るとしおりも何となくうれしくなって言った。
「うん。好き! でも……」
しおりは少し考えて、それからまんじゅうを半分に割ると彼に差し出した。
「はい。これ、大きいから半分あげる」
「え? いいの? ありがとう」
彼はうれしそうに受け取ると言った。
「僕も、このおまんじゅう大好きなんだ。でも、今月ちょっとピンチだからおまんじゅう一つしか買えなくて……。本当にありがとう」
彼はおいしそうにそれを食べた。そんな姫乃を見ているとしおりも何だかとても幸せな気分になって、ぱくりとまんじゅうを頬張った。

その頃、さくらも歩を呼んでいた。
「歩君、これ」
差し出したのはグミの袋だった。
「お姉ちゃん……」
「わたしも好きなんだ。だから、歩君の気持ち、すごくわかる。これ食べて元気出してね」
そう言って微笑む。
「ありがとう。さくらお姉ちゃん」
歩はにっこりとその袋を受け取った。それは歩が好きなグミとは違っていた。しかし、今の彼にとってはそんなことはどうでもよいことだった。さくらにもらったということだけで胸がいっぱいになり、お腹もいっぱいになった。

そこへお父さんが鼻唄まじりに階段を上がって来て言った。
「しおりちゃーん、歩くーん。じゃーん! 見て! お父さんねえ、二人がけんかしないようにこーんなにいっぱい買って来ちゃった。二人共たくさんお食べ」
大きな袋にぎっしり詰まったまんじゅうとグミの山。しかし、子供達の胸とお腹は既に甘いLOVE&LOVEのおまんじゅうとグミで満たされていた。